Lesson6-2 感覚器官と運動器官

感覚器官と運動機能の発達

前章では子どもの発達に関する様々な仮説を紹介しました。今度は少し具体的に、子どもの発達がどのような順序で進むのか、という点を追いかけていきましょう。

まず感覚の発達について説明をします。人間の五感は胎児期から発達を開始し、生後半年ほど経てば一通り備わるようになります。

最も発達開始が早いのは触覚です。これは妊娠8週頃に口唇部から始まり、頭からお尻にかけてゆっくりと発達をしていきます。続いて妊娠20週頃になると舌や口腔内が形成され、母体の中で指をしゃぶる、羊水を飲むなどの行動が見られるようになります。味覚や嗅覚は胎児の頃に発達し、出生後間もない段階ではもう甘い・辛いを感じる味覚が機能しており、母乳の匂いも嗅ぎ分けられるようになっています。

また、同じように妊娠20週過ぎ頃には聴覚も機能し始め、母親の鼓動や血液の流れる音を聞き取れるようになります。羊水に隔てられているので明瞭に音が聞こえるわけではありませんが、母親の声などは骨伝導によってはっきりと伝わるため、胎教を行うならこの頃からが効果的と言えます。

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最後に発達するのが視覚で、妊娠28週頃から光に反応するようになりますが、新生児の段階でもまだ視力は0.01ほどとまるで発達していません。焦点が合うのは目の前の20~30cmほどなので、抱きかかえられたときに母親の顔がはっきり分かる程度の視力である、と考えるとよいでしょう。ただし、そんな視力も生後半年頃になれば大人に近いレベルまで成長します。

運動機能

運動機能は原始反射、バランス感覚、移動運動、協調運動とおおむね順番どおりに発達していきます。発達にはもちろん個人差があるので、生後○ヶ月といった数字はあくまで目安として捉えて下さい。

原始反射

いわゆる反射と呼ばれるものは、外部の刺激に対する反応の中でも大脳を介さないものです。平たくいえば意思や意識とは無関係に勝手に体が動くものを反射と呼ぶのですね。新生児の運動はほとんどがこの自動的な反射行動で、その中でも新生児に特徴的な反射のことを原始反射と呼びます。唇に触れたものを無意識に吸おうとする吸綴反射、手に触れたものを握ろうとする把握反射がその代表例でしょうか。

これらは頼りない運動系の発達を補うためのものと考えられており、中枢神経系の発達にともない姿勢や筋肉のコントロールが可能になると消えていきます。吸綴反射はおよそ生後一年で、把握反射は半年ほどで見られなくなります。

バランス感覚

自分の姿勢を制御できるようになることをバランス感覚の発達と呼びます。平衡感覚自体は妊娠14週頃にはもう完成しているのですが、全身のバランスをコントロールできるようになるにはまだまだ時間がかかります。赤ちゃんの全身の筋肉が発達してくるのは生後3ヶ月頃からで、生後5ヶ月頃には首がすわるようになり、やがて座る、立つといった基本的な姿勢の制御ができるようになります。

粗大運動

歩く・走る・泳ぐなどの大雑把な運動を粗大運動と呼び、これらは環境から学習するのではなく成熟によって自然と身につくものとされています。もっとも簡単な粗大運動は寝返りですが、そこからハイハイへと移行し、1歳頃になると歩けるようになります。2歳頃になると走ることも可能になります。

微細運動

粗大運動と違って、手足を用いた精密動作のことを微細運動と呼びます。ものを巧みに掴めるようになるのは把握反射の終わる生後半年頃で、この頃から視覚と協調して細かい動きを習得していくことになります。

最初はものを掴む程度でも、成長していくにしたがい細かい動きが出来るようになり、1歳頃にはスプーンなどの食器を手のひら全体で握れるようになります。半年もすれば親指、人差し指、中指を使って柔らかく握ったり、更に半年も経てば鉛筆と同じような持ち方を学ぶことも可能です。

衣類の着脱、字を書く、パズルのピースをはめるなどもこの微細運動の一種です。積み木を積んだり粘土を弄って遊んだりするのも、微細行動による効果を確かめたり、手や指の巧緻性を高めるといった効果があるのです。