児童家庭福祉とは
社会的養護と区別するのが難しい概念ですが、児童家庭福祉とは、児童および児童の置かれた環境に鑑み児童の最善の利益を保障し、幸福実現のために保護者とともに社会全体が行う実践と法制度です。噛み砕いて説明するのは難しいのですが、「子どものいる家庭が生活苦に陥らないように、法律を整えて国や自治体からお手当てを出せるようにしておきましょう」といった感じでしょうか。
その歴史的な変遷は以前のLessonでも触れましたが、ルソーの『エミール』からエレン・ケイの『児童の世紀』(「20世紀は児童の世紀」という歴史的な宣言)と徐々に足場を固められ、国際的な運動として盛り上がっていきます。
アメリカ白亜館(ホワイトハウス)会議宣言、正式名称「要保護児童の保護に関する会議」では、児童家庭福祉のためアメリカの全国会議が10年ごとに開催されており、1909年の第1回宣言「家庭は文明の最高の創造物」は20世紀における育児思想の基調となりました。
その後も児童の権利に関しては、1924年に国際連盟で採択された児童の権利に関するジュネーブ宣言や1959年に国際連合で採択された児童権利宣言、以前も触れた子どもの権利条約など、思想的な礎が積み重なっていきました。また、2014年に日本でも発効されたハーグ条約において、国境を越えて不当に子どもを連れ去ったりとどめおくことができないようになりました。
児童家庭福祉の法制度について
児童福祉施設や里親制度については前回のLessonでも触れた通りです。今回は児童家庭副に関する法制度や関連法について学びましょう。
児童扶養手当法
1961年に成立した法律です。当初は母子家庭の子どもが健全に育成できるよう児童扶養手当を支給するという内容でしたが、2010年の改正以来父子家庭も対象となりました。
特別児童扶養手当などの支給に関する法律
1964年、障害を有する子どもへの手当てを支給し福祉の増進を図ることを目的とした法律です。精神・身体に障害を有する児童へは特別児童扶養手当を、重度であれば障害児福祉手当を、さらに重度であれば特別障害者手当を支給します。
母子及び父子並びに寡婦福祉法
1964年に成立した母子福祉法が1981年の改正で寡婦を対象とし、2002年の改正で父子家庭を含み、2014年に現在の法律名に変更されました。ひとり親と子どもの家庭における生活の安定と向上のため、必要な措置を講じるための法律です。
母子保健法
1965年に成立しました。母性並びに乳児・幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ国民保健の向上に寄与することを目的としています。
児童手当法
1971年の成立以来、家庭における生活の安定と次世代を担う児童の健全な育成と資質の向上を目的として、この法律を根拠に児童手当が支給されています(2010年4月から2012年3月の「子ども手当」が支給されていた期間を除く)。毎月の支給額は、3歳未満に1万5千円、3歳から小学校卒業までの第1子・第2子には1万円、第3子以降には1万5千円、中学生に1万円となっています。ただし、2012年6月からは支給に所得制限が設けられるようになりました。
その他の関連法
児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律
いわゆる児童買春・児童ポルノ禁止法です。児童に対する性的搾取・性的虐待が健全な成長を損なうことを憂慮し、児童買春や児童ポルノに係る行為等を規制し、児童の保護のための措置を定め児童の権利を擁護することを目的としています。
児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)
2000年に成立。児童虐待の禁止・予防・早期発見のために地方公共団体の責務や自立支援のための措置を定めた法律です。ベビーシッターが守秘義務を無視して児童虐待を福祉事務所・児童相談所に通告できるのは、この法律で「守秘義務違反には当たらない」と定められているからこそなのです。
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
1991年に育児休業法として成立し、1995年に介護休業が追加されて現在の名称になりました。子どもの養育や家族の介護を行う労働者の職業安定と家庭生活の両立を目的とする法律で、福祉の増進と経済・社会の発展に資するため、何度も改正が行われています。
次世代育成支援対策推進法
2003年に成立したもので、子育て支援を推進することを目的としています。次世代育成支援対策として国は指針を、地方公共団体及び従業員101人以上の企業には行動計画を策定することが義務付けられています。
関連法については、その他にも少年法、少子化対策基本法、発達障害者支援法、障害者総合支援法などがあります。