Lesson4-3 社会的養護の体系

社会的養護に関する知識の必要性

もしベビーシッター先の子どもが虐待を受けていたら?

以前のLessonでも書いたとおり、しかるべき組織に通告を行います。ベビーシッターとしての仕事はそこでおしまいになりますが、その後で子どもたちがどのような養護を受けることになるのかは、前提知識として持っておかなければなりません。

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それだけでなく、社会的養護に関する知識は、ご家庭から相談を受けたときの返答にも使えるものです。必ず覚えておきましょう。

社会的養護の5つの機能

社会的養護は以下の5つの機能を有しています。

  1. 予防機能……家庭問題防止の発生を予防するための支援
  2. 補完機能……家庭養護機能が欠如していたときに補完を行う
  3. 治療機能……非社会的・反社会的な子ども、障害のある子どもの治療
  4. 代替機能……家庭養護の代替となるサービスや制度
  5. その他……ひとり親の支援、親子関係のフォローなど

社会的養護の体制

社会的養護はまず施設養護家庭養護の2種類に分けられます。施設養護は児童福祉施設などで行われる養護のことで、家庭養護は養育者の家庭における養護です。

施設養護

施設養護には入所型(乳児院、児童養護施設などに入所する)、通所型(福祉型児童発達支援センター、情緒障害児短期治療施設など)、利用型(児童厚生施設など)の三種類に分けられ、入所、家庭から通う、誰でも利用できる、といった利用形態で差別化されています。

そこで行われるのは、施設に入所した直後に行われるアドミッションケア、施設における生活援助支援たるインケア、自立の準備と対処してからのアフターケアを1つにまとめたリービングケアなどです。

また、施設養護の中には家庭的環境で行われるものが存在し、これを家庭的養護と呼びます(家庭養護と間違えやすいのでご注意を!)。

家庭的養護には小規模グループケアと呼ばれるものと地域児童養護施設を使うものの2種類があり、前者の代表的なものが乳児院、児童養護施設、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設などで実施されているものです。これらは原則6~8人の規模で行われています。

地域児童養護施設のことをグループホーム呼び、都道府県知事・指定都市の市長または児童相談所設置市の市長による指定を受けて設置され、少人数の職員と子どもたちが一緒に生活しています。2000年からは民間住宅で運営する施設もありましたが、運営が密室化しやすく適切な養護が行えないなどの問題が可視化され、2011年度からは児童養護施設の分園のみが認められるようになりました。

家庭養護

里親制度

家庭養護の代表的なものが里親です。里親制度は児童福祉法6条の4に規定されたものであり、都道府県知事に申請を行い5つの要件を満たせば、誰でもなることができます。養護対象となる子どもの年齢は18歳未満(都道府県知事が必要と認めた場合は満20歳まで)で、形式としては児童相談所から委託を受けて養護を行うことになります。

要件は以下の通りです。

  1. 心身ともに健全であること。
  2. 児童の養育についての理解及び熱意並びに児童に対する豊かな愛情を有していること。
  3. 経済的に困窮していないこと。
  4. 児童の養育に関し虐待などの問題がないと認められること(専門里親の場合は、児童の養育に関し虐待などの問題を起こしたことがないこと)。
  5. 児童福祉法及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律の規定により、罰金以上の刑に処せられたことがないこと。

また、里親は養育里親親族里親専門里親養子縁組里親の4種類に分けられており、それぞれの特徴は以下の通りです。

  • 養育里親……養子縁組を目的とせず要保護児童を扱って養育します。
  • 親族里親……3親等以内の親族が里親となるケース。養育里親より優先されます。
  • 専門里親……虐待児童の世話など、専門知識が要求される里親です。通常2年以内と期間を定められています。養育に専念できる環境が必要で、養育里親として3年以上の養育を経験し、専門里親研修の課程を修了している者に限られます。
  • 養子縁組里親……養子縁組を前提とした里親です。

小規模住居型児童養育事業

ファミリーホームと呼ばれるもので、養育者の家庭に児童を迎え入れ、児童の自立を支援する事業です。

  • 養育里親としての経験を有するものが自ら事業者として自宅で行う。
  • 児童養護施設、乳児院、情緒障害児短期治療施設または児童自立支援施設の職員経験者が自宅で行う。
  • 上記施設を経営する法人が職員に住居を提供しそこで行う。

と、事業者は3種類に限られており、定員として預かれる児童は5~6人、2人の養育者と1人以上の補助者が必要となっています。

養子縁組

里親制度以外の公的な取り組みとして、養子縁組特別養子縁組が存在します。前者は実の親子関係が継続され戸籍上も養子・養女といった項目が記載されるのに対し、後者は実の親子関係が解消され里親と養子の間に新たな親子関係が生まれ、実子として記載されるところに特徴があります。