社会的養護とは
社会的養護とは、厚生労働省の定義によれば「保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと」であり、「子どもの最善の利益のために」「社会全体で子どもを育む」の2つを理念としています。
養護問題の発生
少子高齢化社会や未婚化・非婚化・晩婚化・晩産化の進行、ライフスタイルの変化や地域社会との関わり方……そんな様々な要素が絡み合い、現在は子どもと親の孤立しやすい環境になっています。これは児童虐待などの養護問題が発生しやすく、また明るみに出辛い状況と言えるでしょう。
虐待について語りやすくなった、昔は虐待扱いでなかった養育拒否(ネグレクト)も計上するようになった――といった事情もあり、相談件数などは年々増加しています。一方で虐待死の件数などは減っていることから、状況は次第に良くなりつつあると言えるのですが、苦しむ子どもたちが救われないという問題は、今なお解決の兆しが見えません。
放任、虐待、酷使、棄児、養育拒否は子どもの心に深い傷をもたらし、アタッチメントの不足により情緒障害児となって児童福祉施設に入所する子どもがいます。子どもの心身の発達や人格形成に大きな影響を与える児童虐待に対しては、早急に手を打たなければなりません。そのための社会的養護です。
従来は親権の問題により他の家庭に手を出せない状況が続いていましたが、2012年の民法及び児童福祉法の改正により、従来の親権喪失に加え2年以内の期間を定めた親権停止、および法人または複数の未成年後見人の選任が認められるようになりました。社会的養護をめぐる状況は、今大きく動いています。
社会的養護の理念
社会的養護はいくつかの理念によって支えられています。
まず児童福祉法について見てみましょう。児童福祉法は児童養育の責任を保護者とともに国および地方公共団体が負うという公的責任を確立し、様々な児童福祉施設の規定や福祉の措置、補償、事業および施設、そして費用について定めたものです。日本の児童福祉の理念はこの法に下支えされていると言っても過言ではありません。
1951年、国会で採択された児童憲章は、3つの基本綱領と12条の本文からなるもので、児童は基本的人権を有する存在であることを明文化しています。児童には大人と同じように生存権、生活権、発達権といった諸権利があり、われわれはその権利を尊重しなければなりません。
同じように1989年に国連総会で採択された児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)では、子どもは権利を行使する主体として位置づけられ、ただ守られ庇護されるだけではなく、権利を行使しようとしたときに周囲の大人がそれを支援するという子ども観を提示しました。
まだ様々な保障やサービスは強者が恵んであげるもの、といった恩恵的福祉観や、子どもは未熟な存在だから大人に支配されねばならないという支配的子ども観は存在していますが、上に挙げたような理念的な支えの下に子どもに対する社会的養護が構築されています。
その他の法や規定
子どもに対する暴力を抑止し権利擁護するためのものとして、いくつかの法律が存在します。
たとえば、1999年「児童買春、児童ポルノに係る行為などの規制及び処罰並びに児童の保護などに関する法律(児童買春・児童ポルノ禁止法)」、2000年「児童虐待の防止などに関する法律(児童虐待防止法)」、2001年の「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」があります。
なお、2014年に児童買春・児童ポルノ禁止法は「児童買春、児童ポルノに係る行為などの規制及び処罰並びに児童の保護などに関する法律」に、DV防止法は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護などに関する法律」に改称されました。