Lesson1-2でも紹介したように、ベビーシッターサービスにもさまざまな形があります。各サービスについて知識を深めておきましょう。
産後ケア
主に0歳児のベビーシッターを行います。対象となるクライアントは出産したばかりの女性で、主な役割は子育てのサポートです。ベビーシッターを除く公的な支援としては、保健所の保健師による巡回指導があり、また生後2ヶ月にもなれば保育所へ入る資格を得ることができます。
産後ケアの需要は高く、平成26年度実態調査報告書によれば、産後ケアの「利用が多い」「利用がある」と回答した事業者はそれぞれ32.3%と48.4%でした。合計すると80%以上の事業者が産後ケアの需要を感じています。それだけ重要度の高いサービスと言えるでしょう。
産後間もないご両親は、子どもをちゃんとお風呂に入れられるか、授乳はこれで大丈夫か、体調を崩していないかと悩みの種が尽きません。乳児の世話や家事(炊事洗濯)を代行し、母親の相談にも乗ってくれるベビーシッターは、実に心強い存在と言えます。
母親の体が回復するのはおよそ6~8週間、出産で大きくなったお腹や産道が元の状態に戻るのにはそれぐらいの時間がかかるのですが、これを産褥期と呼びます。出産による傷、疲労や倦怠、腰痛、便秘、痔、立ちくらみなどの諸症状に加えてマタニティ・ブルーで情緒不安定になることもありますし、最悪の場合は産後うつ病の可能性もあります。
産後ケアを求められた場合は、新生児のおむつをきちんと取り変えたり、体を洗ったりしてしっかりしたお世話をすることで、地道に子どもとクライアントの信頼を勝ち取る必要があるでしょう。
病後児保育
体調の悪い子どもの面倒を見る「病後児保育」も、産後ケア同様多くのベビーシッター会社が行う主要のサービスとなっています。乳幼児の免疫は完成しておらず、ただの風邪だけではなく、ウイルス性のおたふくかぜや水痘、発疹、手足口病などさまざまな病気にかかるからです。
診察を受けて薬をもらうだけなら、両親だけでも不可能ではないでしょう。しかし、病後の面倒を見るためにはずっとそばにいなければならず、仕事を休めない場合にはベビーシッターの手を借りたいところです。もちろん、ベビーシッター側としては、病気に対する確かな知識を身につけておくべきなのは言うまでもありません。
送迎保育、同行保育
保育所や学校への送り迎えを担当する送迎保育、保護者に同行する同行保育は、ベビーシッターという仕事の中でも特にポピュラーなものです。
送迎保育の要点は「子どもの移動を安全に滞りなくサポートする」ことで、たとえば子どもと手をつないで車道側を歩いたり、公共機関やエレベータなどを利用する際に安全確認を行い、正しい行き先や連絡先を完璧に把握して時間通りにつく、といった勤務態度が求められます。
同行保育は保護者の行き先についていくことになりますので、数週間ほど海外で暮らすなんてこともあるかもしれません。ベビーシッター自身が健康を管理すること、滞在先の医療機関などをあらかじめ抑えておくこと、必要であればパスポートなどを手配できること、そういった細々とした点に加えて、クライアントの身内として扱われても恥ずかしくない礼節が必要となります。
障害児保育
日本で障害児専門の保育所がオープンしたのは2014年のことでした。これは我が国の保育サービスが障害児まで対応できていなかったこと、障害児の両親は保育所にも預けられない状態に置かれていたことの証左です。
ベビーシッター会社にしても、障害児の絶対数が比較的少ないという理由はあるにせよ、平成26年度実態調査報告書によれば、障害児保育の利用を「あまりない」と答えた会社が半数を超えています。現状、障害児に対する社会的な受け入れ態勢が整っているとは言いがたく、頼りになるのは両親とベビーシッターだけ、という状況になることもあります。
障害児(child with a disability)は特別なニーズを持つ子どもですから、提供するケアも特別なものとなります。目や耳などの感覚器官に障害がある場合、口唇口蓋裂など言葉の発音に問題が出るもの、ダウン症など気質的なもの、自閉症・脳性麻痺、てんかん……その他にも様々な障害があり、ケースごとに対応は異なります。もし障害児保育を依頼された場合は、しっかりと勉強をしてから臨む必要があるでしょう。
多胎児保育
双生児や三つ子のことを多胎児と呼びます。出生後間もない頃はきょうだいの生活リズムが合わないこともありますので、ベビーシッターはそれぞれのお昼寝や食事のタイミングを把握して、適切な保育を行う必要があります。同時期に同じ病気にかかることもあり、訪問先は同じでも手間は2倍以上ということにもなりかねませんから、多胎児保育を行う場合はクライアントさんとよく相談する必要があります。
大事なのは子どもたちの個性をきちんと理解すること。双生児や三つ子といっても、一卵性でもなければ外見は異なりますし、似ていたとしても成長するにしたがって微妙な差が出てくるものです。その違いを理解してあげるのは、徐々に自我の芽生えてくる子どもにとっては嬉しいことです。
言葉にも気をつけましょう。たとえ悪意のないものであっても、多胎児に向けられがちな言葉を半ば身内であるベビーシッターにかけられると、クライアントであるご両親としてもストレスが溜まります。大切なのは子どもに対するのと同じく、保護者に対しても理解者になることです。
外国の子どもの保育
語学力が大事と思われがちですが、むしろ大事なのは各国の文化とその家の方針を理解することです。日本では当たり前の行為でも外国では全く異なる意味を持つなど当たり前のことですし、その逆も多々あります。
依頼を受けた場合は、きちんとした保育が行えるよう、両親や子どもとのコミュニケーションが特に重要になってくるでしょう。