Lesson2-2 ベビーシッターの心構え

マザリングとは

愛は乳幼児に必要な栄養

新生児や乳幼児の身の回りの世話を愛情・愛着に基づいて行うことをマザリングと呼びます。

身の回りの世話を精一杯行うのは、子どもの世話をするうえでとても大事なことですが、人はそれだけでは幸せになれません。必ず愛情愛着が必要になります。

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13世紀、神聖ローマ皇帝フリードリッヒ2世が試みた有名な実験があります。彼は乳母たちに次のようなことを命令しました。「子どもたちに充分に乳を与え沐浴をしてあげなさい。ただし子どもたちに言葉をかけ、抱き上げてあやし、機嫌を取ったりしてはいけない」。

乳母たちがこの命令を遵守した結果、子どもたちは知的障害情緒障害を抱え、成人を迎える前にみな死に絶えてしまいました。

この実験が示唆しているのは、新生児期や乳幼児期においては単なる身の回りの世話ではいけないという揺るがしがたい事実です。眼差しを交わし、微笑みかけ、機嫌を取り、いっぱいの愛情をかけてあげなければ、子どもは健全に育つこともままなりません。

ホルモンと愛情

この現象は安らぎを感じるホルモン「オキシトシン」によってある程度は説明がつきます。オキシトシンは脳下垂体後葉ホルモンの一つであり、分娩の促進乳汁分泌に影響を及ぼすものです。

他方、オキシトシンは抱擁ホルモンとも呼ばれ、スキンシップや抱擁、手をつなぐ、性行為やマッサージなどによっても分泌されるのです。鼻からオキシトシンを吸引したところ金銭取引の際に相手への信頼が増したという実験もあったほどで、好意的な人間関係の形成にはとても重要な役割を果たします。

もちろん、親と子の関係でも重要なものです。子どもの健やかな成長のためにも、オキシトシンの分泌を促すような心の底からのコミュニケーションは欠かせません。ベビーシッターにも同じことが言えますね。

教えこもうとする態度はNG?

子どもは非力で無力な状態にありますが、人間としての諸能力を有していないわけではなく、積極的に外界へ働きかける有能性(コンピテンス)を有しています。新生児・乳幼児は対しては、常に「教える」態度ではなく、自発的に学び動けるような工夫も必要でしょう。

あまり教え込もうとすると自発的に学びたがる好奇心さえ押さえつけてしまいますので、のびのびと自由に学ばせることを意識する必要があります。個性を伸ばしてく段階の子どもたちに信頼を寄せること、すなわち子どもの有能性に対する信頼感が大切です。

ケアの真髄に触れる

保育を英語で表すとChildcareとなります。ケアはエリクソンの提唱する人間の発達段階で7段階目にあたる成年期(成人期後期)における価値・資質であり、あることを「したがる」、あるものを「大切にする」、保護対象に「気をつける」、そして物を「破壊しないように注意する」といった様々な精神がその1語に込められています。

ケアは子どもと関わる上で最も重視すべき資質ですが、この能力を獲得するためには人として充分に成熟していなければなりません。若いベビーシッターにとってはなかなか難しいことですが、子どもと一生懸命関わっていくうちに、慈しむ心やケアの精神が育まれていきます。子どもを信頼し、子どもと関わることで、業務に必要な資質が備わるのですね。

保育マインドとは

子どもに心の栄養を与えるマザリング、子どもの有能性を信じ信頼を寄せること、そしてケアの真髄に触れ慈しみの心を育てること。これらの資質を総称する言葉が保育マインドです。もちろんベビーシッターには子育ての知識が必要不可欠ですが、心構えとしての保育マインドがなければ、子どもはまっすぐに成長できません。技術と同時に心も磨くことで、一流のベビーシッターを目指しましょう。