社会性を育む時期
人見知りがおさまるわけではありませんが、3歳児ともなると他者との協調性も充分に伸びているころです。養育者や他の子どもとの関わりの中で人間関係を学び、基本的な社会生活のルールを適切に守れるようになれば、順調に成長してくれていると考えてよいでしょう。
もちろん、障害のある子どもや恥ずかしがりやの子どもであれば、根気良く対処していかなければなりません。現代社会は極力他人と関わらないようにしても生きていけるように作られていますが、かといって人と関われなければ様々な問題が生じます。この時期に、なるべく取りこぼしのないように基礎的な生活のルールを学んでいきましょう。
基礎的な生活のルール
衣類の着脱
指先の動きが細かくなったおかげで、1人でも着替えができるようになってきます。能力が追いついてきたら次は作法を教えましょう。衣類の畳み方、しまい方、靴の揃え方、そういった細々としたルールを教えていきます。
ここでもただ教えるのではなく、ちょっとした工夫を凝らしてみましょう。たとえば、
- 衣服を正確に手順通りに畳むとキャラクターの絵柄が浮かび上がるような服を用意する。
- 衣服のしまい方を教えるために子ども用の衣装ケースを目立つものにする。
- 目安としてスリッパの形を描いた台紙を入り口に貼り、脱いだ後に整える習慣を身につけさせる。
そんな風に、好奇心を刺激しながら自然と作法を身につけていけるようにしてみましょう。
排泄
3歳児ともなれば自尊心だって育っているもので、排泄に失敗すれば羞恥心を感じることもあるようです。したがって、毎回失敗することなく排泄できるようトイレトレーニングを重ねておくのはとても大事なことなのです。「尿意を感じたらトイレに行く→排泄→お尻を拭く→排泄物を流す→手を洗う」という一連の流れを、2歳の頃からそばで見守るようにしてください。
子どもが完璧に排泄が出来るようになるにはまだ早いのですが、3歳児は尿意を感じ取れる時期ですから、まだ身についていないトイレマナーを教えるのにも効率が良いのです。また、トイレに行く場合はあらかじめ「何時に○○の予定があるから事前にトイレに行く」というように、見通しを持って計画的にトイレに行くように教えるのも大事です。
ただし、女児の場合は排泄後に「前から後ろに」拭くということを教えておかなければなりません。ひどいと炎症が起きますし、いちど習慣になってしまったら直すのは大変です。
社会生活のルールとマナー
安全に関するもの
集団生活を送る上で、まずは身の安全に関するルールを教えなければなりません。
最初に教えるべきは、3歳児でも分かるようなシンプルなルールです。危ない場所についたときは、きちんと口頭で理由を説明しながら危険性を説きましょう。「!」マークのような、注意喚起の目印を貼っておくのも良いでしょう。
家の中の危険な場所や危険なものには同じ「!」マークをつけるなどして、そこに何らかの法則性があること、危険であることを推測できるようにしましょう。
成長の早い子なら交通ルールを吸収してくれることがあります。
- 踏切が下りている間は線路を渡ってはいけない。
- 赤信号では止まらなくてはならない。
- 手を挙げて渡る。
しかしこの手の交通ルールは小学生くらいにならなければ覚えないこともありますので、3歳の段階ではまだ早いかもしれないということを念頭に置いておきましょう。
一生活者として
手洗い、うがい、食事なども大事な家庭内の習慣です。特に手洗いとうがいは、外から帰ってきたら必ず行うようにしましょう。流水だけではなく、きちんと石鹸を使って汚れを物理的に洗い流すように指導しておくと良いでしょう。
乳歯が生え揃ったら歯磨きの練習も忘れないようにしましょう。それまでは養育者が手ずから子どもの口を広げ、歯磨きをしていただろうと思われます。しかし乳歯が生え揃ってきたら、大人の歯磨き補助は必ずしも必要ではなくなります。食後、寝る前などに、自発的に歯を磨く習慣を身につけさせてください。
その他にも、前述の衣服の片付けや、散らかしたおもちゃの片付けなども、子どもの意欲を削がないようなやり方で教えていきましょう。
応答する心、葛藤する心
3歳児にもなると大人からの要求も理解できるようになるものです。「○○してほしい」という言葉や態度・そぶりで子ども心にも何を求められているかは分かります。たとえば、夕食だといわれたらおもちゃを片付けて食卓につかなければならないことぐらい、子どもはきちんと理解しているのです。でも本当は、もう少し遊んでいたい気持ちもあるでしょう。
このような葛藤を抱えるのが3歳児の特徴です。葛藤そのものはストレスになりますが、葛藤を乗り越えて行動したときに褒め言葉で報いられると、子どもは大いに喜びます。
たとえば前述の例だと「おもちゃを片付けて夕食の席につく」という行動が取れたときは、もっと遊びたいけど自己抑制した点をきちんと評価してあげましょう。葛藤を乗り越えた満足感、養育者との共感が3歳児を育てます。