Lesson1-1 現代の保育に関するサービス

現代保育の状況

Introductionでも触れた通り、現代日本には保育にまつわる様々な問題があります。この問題をしっかり把握するため、ベビーシッターについて学ぶ前に、まず現代の保育に関する基礎知識を学びましょう。

保育の理念と概念

そもそも「保育」とはなんでしょうか。

子どもは未熟でか弱い存在とされています。したがって、大人になるまで「保護(養護)」し、自活できるようになるまで「教育」しなければなりません。保育とは、そのための行為を意味する包括的な概念です。基本的には就学前、つまり6歳頃までの子育て全般を指す言葉と考えると分かりやすいでしょう。

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日本における保育思想は、明治時代の学制に始まり、近代的な教育制度を導入しながら発展してきました。第二次世界大戦後の日本では、「基本的人権の保障」を含む日本国憲法が公布され、その精神は1947年に制定された「教育基本法」および「児童福祉法」に持ち込まれています。翌1948年、文部省は「保育要領」を刊行し、幼児期教育のあり方を解説しました。やや遅れて厚生省も「保育所運営要領」や「保育所保育指針」などを制定し、保育に関する法制度を整備してきました。

1989年、子どもの基本的人権を保障するため「児童の権利に関する条約子どもの権利条約)」が国連総会で採択されました。日本は1994年にこれを批准し、すべての児童を保護し、その基本的人権を守るという責任を負うことになりました。条文の中には「児童の最善の利益が主として考慮されるものとする」という一文があり、保育に関わる人間はこの理念に基づき仕事をすべきであるとされています。

ベビーシッターもまた保育に関わる人間ですから、子どもを個性ある人間として尊重し、大切に育まなければなりません。

保育所と幼稚園って違うの?

前段でも少し触れましたが、幼児教育と保育の概念は似ているようで少し異なります。概念としては保育の方がより広く、幼児教育はその中に含まれる教育的な関わりを中心とする用語です。日本では幼児教育に関しては文部科学省、保育に関しては厚生労働省の管轄となります。

幼稚園と保育所の違いもここに端を発しています。

幼稚園は主として幼児教育を行う場所で、3歳から就学までの子どもを預かります。預かる時間も4時間が基本であり、義務教育およびその後の教育における基礎作りに主眼を置いています。最近では規定時間以降も子どもを預かることで保育所としての役割を兼任するところも増えましたが、幼稚園はあくまで学校の一種で、教育機関なのです。

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保育所は児童福祉施設の1つで、児童福祉法の第39条「保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を日々保護者の下から通わせて 保育を行うことを目的とする施設(利用定員が20人以上であるものに限り、幼保連携型認定こども園を除く。)とする。」を根拠に設置されています。

もし児童福祉法の定める保育所の基準に該当しない場合は、認可外保育施設として民間で運営されることになります。会社等が運営する事業所内保育施設、夜間のお預かり・宿泊を行うベビーホテル、山間部に設置されるへき地保育所などがこれに該当します。いわゆる無認可保育所もこれに当たりますが、認可による規制を避けるため条件を満たしていながら無認可のまま経営する保育所もあれば、全く保育に必要な条件を満たせないような施設も存在します。

また、2006年には幼保一元化の方針のもと、幼稚園と保育園両方の機能を備えた認定子ども園制度が始まり、様々なタイプの教育・保育施設が生まれつつあります。

地域型保育・各種子育て支援

地域の互助的システムとしては、市区町村の実施するファミリーサポートセンター事業というものがあります。乳幼児・小学生などの子育てを行う利用会員と、子育て援助の提供を希望する提供会員が登録し、子どもの送迎や預かりのマッチングを行う互助的なものです。

また、2009年に厚生労働省が定めた「家庭的保育事業ガイドライン」をきっかけに、預かる子どもが5名以下ならば保育者の居宅その他の場所で保育を行える家庭的保育が推し進められるようになりました。

家庭的保育者は3人以下の乳幼児を(家庭的保育補助者とともに行うのであれば5名以下)保育できます。保育を行う部屋は3人で9.9㎡以上、保育時間は原則8時間です。類似の試みは古くから江戸川区などで行われていたのですが、昨今ようやく日の目を浴びてきたようです。

ベビーシッターは民間の保育サービス

先に挙げたベビーホテルや無認可保育所は民間の保育サービスです。ベビーシッターもその中の一つで、公的に制度が整備されているわけではありません。

現時点では開業に関する決まりもありませんから個人事業主として働くこともできますし、ベビーシッター会社に登録して働くこともできます。クライアントからの依頼を受けて直接・間接的に交渉し、契約を交わし、訪問先で子どもに適切な保育サービスを提供する。それがベビーシッターの働き方です。

平成27年4月、子ども・子育て支援新制度が施行されたことにより、居宅訪問型保育事業が公的給付の対象となりました。保育者の要件は家庭的保育者と似ていますが、原則として1人につき1人の3歳未満の乳幼児を保育することになります。詳しくはお住まいの市区町村に問い合わせる必要がありますが、いずれベビーシッターサービスも公的給付の対象となるかもしれませんね。