少子化が進んだのに、子育て支援が足りていない?
「丙午の年に生まれた女性は気性が荒い」
丙午(ひのえうま)とは「寅」や「卯」のような干支のことで、60年おきに一周する十干・十二支の43番目に当たります。この年に生まれた女性は気性が荒い、という迷信は江戸時代の頃から存在しますが、科学的根拠は何一つありません。しかし、結婚や出産のような人生の一大事では、たとえ根拠がなくとも信じてしまうものです。
日本では丙午の年は出生率が大きく下がる傾向にあり、例年2.00ほどの値で推移していた合計特殊出生率(total fertility rate、TFR)が、1966年だけ1.58まで急落するという出来事がありました。この数字は翌年からまた持ち直したのですが、少子化の進んだ1990年には前年(1989年)の合計特殊出生率が1.57という数値を記録したことが判明し、これが日本全国に大変な衝撃を与えたのです。
「丙午の年より少ない!」
1.57ショックと呼ばれた合計特殊出生率の急落をきっかけに、日本政府は少子化を重要な問題として認識し、夫婦が安心して子どもを生み育てられるよう、子育て支援の充実を図るようになりました。
ところがどうしたことでしょう。それから四半世紀も過ぎたにも関わらず、保育所に入れない子どもはいまだに2万人を越え(待機児童問題)、適切なサービスを受けられないまま放置されています。
それが現代日本における保育の現状です。
待機児童問題とその解決策
では、なぜそのような事態に陥っているのでしょうか。理由をいくつか挙げてみましょう。
- 核家族化と女性の社会進出が進行し、保育所などを利用しなければ子育てできない家庭が増えたため、保育所の需要が増加した。
- 不況による労働環境の悪化により、子どもが幼い内から両親ともに働かざるを得ない家庭が増えた。
- 都市への人口流入は進んだものの、土地の問題があるため保育所の数を増やすのは困難。
身も蓋もないことを言ってしまうと、みんな子どもに構う充分な余裕がないのです。
厚生労働省は保育所の増設・保育時間延長・休日保育などを盛り込んだエンゼルプランなどを打ち出し、保育ママ制度の要件を緩和するなどの対策を進めていますが、子育ての現場はどこもかしこも「人手と場所が足りない!」という状況のままです。
本来なら信頼できる大人の下で暮らすべき子どもが、適切な保護を受けられていない。この状態を見過ごすわけにはいきませんが、わたしたちは一体どうすれば子どもたちの助けになれるのでしょうか?
在宅保育と訪問保育
「人手が足りない」「保育所を増やすのも難しい」この問題を解決するための試みとして、在宅保育や訪問保育があります。
在宅保育とは、自宅を保育の場所として提供し、ご両親から子どもを預かる形式の保育のことです。訪問保育は、クライアントのご家庭を訪問し、訪問先で子どもの面倒を見るという形式になります。前者の代表的なものが保育ママ制度、後者の代表的なものがベビーシッターです。
確かな保育の知識と保育マインドを身につけたベビーシッターは、もともとはイギリス生まれの制度でしたが、日本でも徐々にマッチング業者や利用者が増えています。
働く親にとっては、子どもの面倒を見てもらえるベビーシッターは強い味方と言えるでしょう。産休・育児休暇の制度は次第に整いつつありますが、会社を休んだり退職・再就職を行うのはまだまだリスキーなことで、場合によっては生涯年収に数千万円程度の差が出てしまうこともあり得ます。ならば、たとえ高くついたとしても、仕事を続けながら信頼の置けるベビーシッターを長期的に利用する方が長い目で見て安くつく……そんな事例もあるのです。
ベビーシッター資格取得講座とは?
本講座の目的は、そのような需要に応えられる訪問保育のプロ、ベビーシッターを養成することです。講座を修了したみなさんには、乳幼児から学童までの面倒を見ることで、「保育所に預けたいけど空きがなくて……」とお嘆きのご両親に救いの手を差し伸べていただきたいのです。
もちろん、ベビーシッターの仕事や保育について学ぶメリットはそれだけではありません。本講座では、現代の保育を巡る状況を歴史的な流れの中で捉える能力、保育士・保育ママ・チャイルドマインダーなどの同分野の資格取得への足がかりとなる学力、そして実際の子育てに役立つ知識が得られます。
保育関連の仕事に就く予定がなくとも、甥や姪、近所の子どもの面倒を見る可能性だってありますし、初めて子どもを育てるときに初心者ではなくプロとして関われるのでは安心感が違います。保育に関する問題や制度を知ることで適切な助言も行えるようになりますし、本講座には知っておいて損のない知識が詰まっているのです。
そして、合格の暁には一般社団法人 日本能力教育促進協会認定「プロフェッショナルベビーシッター」として、様々な活動に役立てていくことができます。
本講座のカリキュラム
本講座では、現代保育の状況、ベビーシッターに関する基礎知識を学んだ上で、保育士など他の保育にまつわる資格でも必要な基礎教養を身につけ、最後に0歳児から小学生までの発達の特徴とお世話の仕方について学んでいきます。
現代保育の状況に関しては第1章、ベビーシッターに関する基礎知識は第2章。「教育」「社会的養護」「社会福祉」「保育と発達」「健康と保健」「健康と食生活」など、保育全般に関わる知識は第3章~第8章で学びます。
第9章以降は最もスタンダードである「保育所保育指針」(厚生労働省)の分類にならい、子どもの発達や成長、時期に合った保育のポイントなどを学びます。第3章以降で学んだ知識がときどき顔を出すような内容となっていますので、分からないことがあったら前半に戻って読み直してみましょう。きっと理解が深まるはずです。