Lesson12-1 2歳~3歳の子どもの保育

2歳児の成長傾向

2歳から3歳にかけては、基本的な運動能力が身につく時期です。しかし精神面では様々なものを嫌がるとされる「魔の2歳児」と呼ばれる期間でもあり、両親の気苦労も絶えません。

ベビーシッターは子どもの個性を丁寧に掴み、同時にクライアントがストレスを溜めないようにしっかりケアし、負担を分かち合いましょう。子どもと大人双方の相談相手になると考えて下さい。

身体的機能の発達

歩く、走る、跳ぶなどの基本的な身体機能指先の器用さが少しずつ成長していきます。やがてはボールを蹴る・投げる、もぐる、段ボールの中に潜り込む、三輪車に乗るなど、これまでは考えられなかったような複雑な動きをするようになり、衣類の着脱なども指先の発達にともない可能となります。

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心臓、肺、胃や腸などの内臓組織および機能も成熟し、胃の容量は約500mlを超え、成人の1/3~1/4ほどになります。排泄のための生理機能が整ってくるのもこのころのことで、膀胱や肛門の括約筋が大脳皮質の命令で抑制されるようになり、一人でトイレに行く準備が整います。トイレトレーニングが実を結ぶ時期と言えるでしょう。

ストレスと病気

一方でちょっと不安なこととして、自律神経系の成熟に伴う様々な病気が起こりやすくなるのもこの頃のことです。ストレスからくる自律神経失調症は大人にとっても大変なものですが、子どもにとっても決して楽なものではありません。なるべく睡眠時間を確保して自律神経の失調を防ぎましょう。

2歳児の35%以上、すなわち3人に1人は親の習慣に引きずられて22時を過ぎてから寝ています。クライアントのご両親も大変ではあると思うのですが、生活習慣に問題があるようなら早めに忠言をするべきでしょう。むろん子どもが寝やすいように、静かで清潔な環境を整えるのも忘れてはなりません。

言語表現と社会性

2歳児の言語を見ていきましょう。語彙が爆発的に増える時期でもあり、2歳で300語、半年後には500語、3歳ごろには1000語近い単語を扱えるようになります。「ワンワン」や「ニャーニャー」などの主語に「キタ」「トンダ」などの動詞をあわせて様々な二語文を作るなど、文構造への理解も進んでいます。他にも「長い」「冷たい」などの形容詞とそれに付随する概念を理解し、これらを利用した問いかけなども行えるようになります。

「これ、なに?」と聞かれることも多いでしょう。言葉を扱えるようになった子供は、様々なものの名前を聞いてきます。特に凝った返事をする必要はありませんが、教えてもすぐに覚えてくれるわけではありません。子どもの終わりの見えない問いかけに疲れ果ててしまうこともあるかもしれませんが、それでも根気良く答え続けましょう。

社会性に目を向ければ、形成された自我が強固になっていく時期と言えます。配られたものや自分の座った椅子などを「自分のもの」として理解し、この「自分の」領域をどんどん広げていくのです。しかし、3歳になるころまでには自己の拡大は止まり、他人への配慮が出来るようになります。

ただし、当然のことながら完璧に自制ができるわけではありません。他の子どもたちと喧嘩を始めたら、ちゃんと仲介役を果たしてあげましょう。

褒めて伸ばす時期

自我の拡大にともない、自尊心や劣等感が今までよりずっと強いものとなります。

子ども自身何事も思い通りにいかないことにストレスを抱え、反抗的になります。そのためこの時期は「魔の2歳児」「イヤイヤ期」と呼ばれることも。ここからは子どもを「褒めて育てる」ことで自己肯定感を形成するのが重要になってくるでしょう。

子どもとの関わりで自尊心を伸ばすような局面を想像してみましょう。代表的なものとしては、たとえば好き嫌いの対応が挙げられるでしょうか。

この時期の子どもはニンジンなどの野菜が好きではないといったことも多く、食べるための工夫を行わなければなりません。細かく刻む、かわいい小動物の形に切ってみる……でも、それだけでは足りません。

大切なのは苦手な野菜を食べるために言葉で意欲を引き出すこと、食べた後にきちんと褒めてあげることです。

例を挙げると、子どもの大好きなうさぎさんを引き合いに出して「ウサギさんも大好きなにんじんだよ」という風に意欲を引き出す働きかけをしてみる、そして食べた後には「きちんと食べられたね」と褒めてあげる、などの工夫を凝らしましょう。こうして自尊心自己肯定感を育てます。自尊心をくすぐることで子どもの好き嫌いをなくしていくのです。

褒めて伸ばせそうな局面としては、他にも衣類の着脱などが挙げられます。この時期の子どもは指先がどんどん器用になっているため、自分で衣類を着たり脱いだりするということを覚えます。とはいっても、すぐに自分だけで出来るようになるわけではありませんから、着脱に関しても影ながら支えてあげる必要があります。

支援はあくまで支援。ベビーシッターが着替えさせてあげる、ではだめなんです。あくまで子どもが自分の意思で着替え、自分の意思で最後までやり遂げることが大事です。たとえば、

  • ズボンをはくときに「きゅっきゅっ」と声をかけ、「ズボンをずり上げる必要がある」ということを思い出させてあげる。
  • 上着を着るときに頭を通すために首周りの布地を掴んで位置を調節してあげる。

このようなやり方で子どもを誘導し、最後に上手く着替えられたら褒めてあげるのです。

子どもが自分のことを自分で出来るようになれば、自尊心も自ずと養われるでしょう。子どもが「自分でやり遂げた」と考えられるように適切に誘導することが、親やベビーシッターに求められるスキルとなります。