Lesson9-1 生後6ヶ月未満の子どもの保育ポイント

ベビーシッターの実践

保育に関する理論的なことは今までのLessonで扱った通りです。ここからは、実際にクライアントのお宅を訪問して子どものお世話をする際に、何に気をつければいいか、という具体的なポイントに踏み込んでいきます。

本講座では厚生労働省の「保育所保育指針」の分類にならい、預かる子どもの年齢を生後6ヶ月未満~6歳頃まで8段階に分類します。今回は保育対象が生後6ヶ月未満であるというケースを想定することにしましょう。

6ヶ月未満の子どもの発達状況

新生児の特徴は以前までのLessonでも学びましたが、ここで一通りおさらいしておきましょう。

生理機能

新生児の睡眠リズムは、3~5時間ほどの睡眠を繰り返しで1日合計15~20時間ほど眠るというものです。赤ちゃんがぐっすり眠れるように環境をきちんと整備してあげる必要があります。

  • 部屋の中を常に清潔に保つ。
  • 室内温度は、夏場なら25~28℃、冬場なら20~23℃で調節する。エアコンの風は直接当てないこと。湿度は60%程度でよい。
  • テレビの音が聞こえないような静かな場所にベッドを設置する。
  • 物が落ちてこないように、ベッドの周辺を常に片付けておく。

生後4ヶ月もすればサーカディアンリズムが身につき、昼夜の区別がつくようになりますので、夜中の電気の消し忘れなどがないようにしましょう。また、この頃から夜泣きの頻度も増えてきますので、ご両親に疲労が溜まっていないかどうか注意する必要があります。

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病気に対してはまだ受動免疫に頼っている段階ですので、感染症にはかかりにくいのですが、水痘や百日咳などは生まれて間もない頃にも見られます。環境の変化でもすぐに調子を崩してしまいますので、油断は禁物と考えましょう。

排泄・排便機能もまだまだ出来上がっておらず、便意を自覚できません。頻繁にオムツを取り替えることになりますので、人形で練習するなどしてオムツの交換をマスターしておきましょう。

体重はおよそ4ヶ月で出生時の約2倍(6kg前後)となります。

姿勢・運動能力・感覚系

首がすわり始めるのは生後3ヶ月ごろで、4ヶ月ごろから寝返りが打てるようになります。

手や指は新生児の頃ならほとんど力がありませんが、手のひらに触れると把握反射によってぎゅっとこぶしを握りこむなどの動きが見られます。ガラガラなどを数分間握っていられるようになるのは3~4ヶ月経ってからです。

生後1、2ヶ月の頃はまだ目の前のものを点としてしか認識できていません。3ヶ月で上下左右に直線的に動くものを目で追えるようになり、更に1、2ヶ月経てば360度全方位を目で追いかけられるようになります。

社会性

生まれたてのころは無差別に誰にでも微笑みますが(注視行動)、生後3ヶ月ごろから特定の相手に向けて微笑んだり身振りで注目を得ようとします(信号行動)。もし赤ちゃんからのシグナルを受け取ったら、それは信頼されている証ですので、きちんと微笑を返してあげましょう。

半年近くになると人見知りになり、養育者を安全基地として行動するようになります。赤ちゃんがいつでも戻ってこれるよう、大樹のようにどっしりと落ち着いて構えてあげてください。

保育のポイント

おむつ交換

新生児のお世話をする場合、最初に慣れなければならないのは、やはりおむつの交換ではないでしょうか。衛生面に気をつけつつおむつを交換することで、シッターと新生児との絆を強めることにもなります。

コツとしては、まず新しいおむつとお尻拭き、そして汚れたおむつを入れる袋を用意します。それから清潔なタオルの上に新生児を寝かせ、これからおむつ交換を行うことをきちんと言葉にして、優しく語りかけながらおむつを交換しましょう。手順としては、古いおむつを開く→お尻拭きでお尻周りの汚れを取る→手早くおむつを交換する、の順で手を動かすことになります。

なお、脱臼の危険がありますので、赤ちゃんの足を引っ張ってはいけません。

授乳

授乳は大切ですが、シッターが母親に代わって母乳を与えるのはあまりないことですから、押さえておくべきは人工乳の与え方になります。ミルク以外に用意するものは哺乳瓶と口の周りを拭くおしぼりだけで構いません。

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人肌よりやや温かい(40℃程度)のミルクを哺乳瓶に入れ、キャップをほんの少しだけ緩めます。そうして赤ちゃんを横抱きにして、哺乳瓶の乳首を口に当てれば、自発的にミルクを飲んでくれるでしょう。飲み終えた後は背中をさすってげっぷ排気)を誘発すれば完了です。

抱き方

首がすわっているかどうか」は赤ちゃんの抱き方を変えるターニングポイントです。まだ首がすわっていない場合、赤ちゃんを抱くときは首と頭を支えて水平になるように抱きましょう。

げっぷをさせるために縦に抱く、いわゆる縦抱きは首がすわっていない状態では危険とされていますが、きちんとしたやり方であればさほど問題はありません。

赤ちゃんを水平に寝かせた状態から、首の後ろに腕を入れて支え、ゆっくりと赤ちゃんの頭を起こし、それからお尻を支えて全身を持ち上げます。

大事なのは首をしっかり支えることです。もちろん、生後3~4ヶ月ほどになって首がすわったら、縦抱きをしても構いません。

注意点

赤ちゃんは何をするか分からないのでじっくり観察する必要があります。たとえばクッションなどで口や鼻がふさがれていないかどうかは常にチェックしておかなければなりませんし、自力で寝返りが打てるようになるまではうつぶせの姿勢が危険なものとなります。

うつぶせ寝そのものには、赤ちゃんを深い眠りに誘い、血液の循環を良くするなど様々なメリットがあると言われています。一方で、SIDSのリスクとなったり、胃のねじれを引き起こしたり、タオルやクッションで窒息死する危険性もあります。もしうつぶせ寝をさせる場合は、そばでじっと見守っていられる状況に限るか、自力で寝返りを打てるようになるまで待つべきでしょう。

寝返りの練習をさせたい場合は、おもちゃで注意をひきつけたり、足を握って身体を反転させる補助をしてあげると良いでしょう。また、お昼寝をさせてあげるときは、地震などを考慮して子どもに物が落下しないように注意しつつ、15分に1回は状態を確認してあげましょう。