子どもの食事として特別なケースを考える
病気や怪我によって食事内容を制限された経験は誰しもあるでしょう。もちろんベビーシッターとしては、子どもが発熱したとき、下痢になったときなどに、食事面でどう対応すべきか知っておかなければなりません。
他方、身体に障害がある、糖尿病などを患っているなど、様々な要因から一般的な食事を提供してはいけないケースがあります。例としてはかなり珍しいものですが、そのような子どもの面倒を食事まで含めて面倒を見る場合は、ケースごとに対策を取る必要があります。
体調不良時の食事
子どもが体調不良のときは、病院に連れて行く、応急処置を取るなどして対応する必要があります。そこまで重篤な状態ではない、すでに通院は済んでいるといった場合は自宅で安静にしておくべきでしょうが、その際はどのような食事を用意するのが良いのでしょうか。
基本的な措置としては、吐き気がある場合を除けば、水分補給をして消化に良いものを食べさせるのが良いでしょう。水分補給には白湯や麦茶、乳幼児用電解質飲料などを用意すると良いのですが、便秘のときは食物繊維の多い果汁や果物が効果的です。
また、発熱時はエネルギーの補給のみならず、ビタミンミネラルなどを補完できるものを食べさせるのが良いのですが、下痢の場合は糖分の多い食材で症状を長引かせてしまう恐れがあるため、プリンやアイスなどは極力控えましょう。
特殊な病気の場合
小児糖尿病
糖尿病にⅠ型とⅡ型があるのは以前学んだ通りですが、いずれにしてもインスリンの作用不足で高血糖状態になってしまう病気です。子どもがインスリン注射を忘れないように管理するのがシッターのメインの仕事になりそうですが、バランスの取れた食事を用意すること、それに運動量を適切に増やし、間食や清涼飲料水の飲み過ぎに注意するのも大切です。
鉄欠乏性貧血
一日3食をきちんと守り、必要な栄養量を満たす食事を規則的に取れば防げる疾患ではありますが、鉄分不足から赤血球の産生が減ってしまう鉄欠乏性貧血は子どもに見られがちなものです。特に身体の成長を伴う乳児期、思春期に発生しやすいため、鉄分を強化した食事を取る、鉄の吸収率を高める食べ方をするなどの工夫が必要です。具体的には、ほうれん草や穀類に含まれる吸収率の低い非ヘム鉄を、たんぱく質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収率を高める、などの手段が有効です。
肥満
クッシング症候群や甲状腺機能低下症など、病気が原因のものがないわけではありませんが、子どもの肥満のほとんどはただの単純性肥満です。大人同様に運動不足や朝食の欠食、間食の取り過ぎなどで肥満になることが多く、要するに成人向けのメタボリックシンドロームが子どもでも発症しているということなのです。例として11歳の子どもを見ると、男子は10人に1人、女子は12人に1人が肥満と判定されています。
食物アレルギー
一部の食物抗原に対する免疫学的反応により障害が引き起こされる反応を食物アレルギーと呼びます。食物アレルギーの発症頻度は0歳児で7.7%、1歳児の9.2%をピークに次第に減少して行き、5歳児では2.5%、学童期以降は1、2%程度と推測されています。
卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かにの7品目は特に主要なアレルゲンとなりやすいため、これらを含む食品は安全が確認できない限り注意深く避けるべきでしょう。ショック症状は強く、放置すれば生命の危険に発展することもあります。間違えて食べてしまったときのために緊急常備薬を確認したり、アドレナリン自己注射(エピペン)の手順を認識しておく必要があります。
障害のある子どもへの対応
知的障害者の場合
心や頭の発達の遅ればかりに目が行きがちですが、知能の発達の遅れは身体面の発育にも影響する可能性があります。たとえば、咀嚼や嚥下に問題があって上手く食事が飲み込めないなど、ある程度飲み込みやすい形状に整えてあげるなどの配慮が必要になってくるでしょう。
自閉症児の場合は特定の食べ物に強いこだわりを持つことがありますので、無理に他の子どもと合わせたりせずに、総合的に栄養を補えるように考えて食事を作る必要があります。
視覚・聴覚などに障害がある場合、料理を食べさせながらそのものの名前を伝えて、食べ物と名前が結びつくように、そして食事に興味が持てるように誘導してあげましょう。
身体障害者の場合
四肢が動かない、身体の一部が欠損しているなど、身体に障害がある場合も特別な配慮が必要です。不自由な身体を使うに当たって健常者よりたくさんのエネルギーを使うこと、消化吸収機能が弱い可能性も高いので消化吸収の良い食事を与えること、カルシウムやたんぱく質を多めに与える必要があることなどを考慮しなければなりません。
体内の消化器官に問題があって食事では栄養を摂取しづらい場合などは、そもそもベビーシッターに世話を頼む人もあまりいないでしょうが、症状にあわせて食事内容を考える必要があります。食事用の自助具やリハビリに適した食器を選ぶ、弾力のあるものをすり潰したりとろみをつけたりするなど、本人ができないことを支援する食事介助の精神を大切にして下さい。