妊婦の栄養
妊娠中の母親は、自分自身の身体と生まれてくる子どものために充分な栄養を取る必要があります。胎児のみならず、胎児の附属物や胎盤の生成と増大のためにも栄養が使われるからです。
もし母親が妊娠中で子どもの面倒が見られないというご家庭にシッターを依頼された場合は、契約内容次第では炊事を代行する場合があります。そんな時のために、妊婦と胎児が摂るべき栄養に関する基礎知識を備えておきましょう。
妊婦が摂取量を増やすべき栄養について
妊婦の場合、一日に摂取量を増やすべき栄養素とその量は、妊娠初期/中期/後期/授乳期(出産後)で以下のようになります。
- エネルギー……50kcal/250kcal/450kcal/350kcal
- たんぱく質……0g/10g/25g/20g
- 鉄分……2.5g/15.0g/15.0g/2.5g
- ビタミンA……妊娠後期に80μgRAE(※)、授乳期に450μgRAE
- 葉酸……妊娠初期は1日に400μgほど摂取する必要あり
※RAEはレチノール活性当量のことで、動物性食品に含まれるレチノール量とカロテノイドが体内でビタミンAの作用をする場合の換算量の合算で表されます。
注意点として、妊娠初期にビタミンAを過剰摂取した場合は奇形児の発生率が3.5倍も高くなると言われています。逆に摂取量が基準値に満たない場合も胎盤異常になる可能性が上がりますので、ちょうど良い量を摂るように心がけなければなりません。レバーやうなぎの食べすぎには注意する必要があるでしょう。
妊娠初期に葉酸が不足すると神経管閉鎖障害の発症リスクが上がります。妊娠中に摂るべき脂質の比率は妊娠前と同じで構いませんが、DHAやEPAは胎児や乳児の神経組織の発育に必要な栄養素なので、青魚(あじ、さば、いわし、かつお等)を食べるようにすると良いでしょう。
ただ、一部の魚が含むメチル水銀は、水銀排出機能のまだ備わっていない胎児に悪影響を及ぼす可能性があるとして厚生労働省から警告が出ていますので、マグロや鯛などは控えめにすべきです。水銀は海水→プランクトン→小魚→中型の魚……と食物連鎖にしたがって濃縮されていくので、大型魚やイルカの肉を避けると比較的安全と言えます。
飲酒と喫煙に関する注意事項
アルコールは胎盤を通じて胎児に移ります。低体重、小頭症、心奇形、心身の発達遅延など、様々な問題をはらむ胎児性アルコール症候群の危険性が上がりますので、飲み過ぎは禁物です。タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用を持つため、喫煙すれば胎盤への血液流入が減少し、胎児が栄養や酸素を充分に取れなくなる恐れがあります。
アルコールに関しては授乳期にも飲むべきではありません。アルコール摂取から30分~1時間もすればエタノールが母乳に混じるため、乳児に悪影響を与えてしまいがちです。
乳児期・幼児期の栄養
乳児期の栄養
乳児期には母乳という理想的な栄養源があります。メリットは以下の6つです。
- 感染抑制作用がある(免疫グロブリンAなどが含まれる)
- 幼児にとって理想的な栄養成分が含まれている
- 授乳時に顔の筋肉や顎の発達が促される
- 授乳を通じて母子関係を育める
- 人工栄養と比べてSIDSの発症リスクが低い
- 新鮮で衛生的である
もっとも、SIDSの発症リスクに関しては、「母親の栄養状態が悪い」「強いストレスにさらされている」など、そもそも母乳が出なくなるような環境に原因がある可能性もあるため、人工栄養=リスクが高いとは言えないことに注意しましょう。少なくとも、現状では人工乳は母乳の代替として充分な役割を果たしていますし、母体から感染症を受け取るリスクも抑えられています。
母乳の与え方については、基本的には乳児が欲しがるときに与える(自律授乳)という方法で構いません。生後半年ほどで乳児はすり潰したペースト状のものを口にできるようになりますが、母乳・人工乳に頼らずにすむ状態、いわゆる離乳の完了までは生後1年~1年半ほどかかります。それまではきちんと母乳や人工乳を与えるようにしましょう。
幼児期の栄養
幼児期になると食物の咀嚼や消化機能が成長しますが、大人と比べると発達は充分ではありませんし、病気に対する抵抗力もさほど高くはありません。したがって、食事は1日3回に加え1、2回の間食を摂るなど、胃の小さい子どもに対する配慮が必要になってきます。
必要なエネルギー量としては、以前も書いた通り「日本人の食事摂取基準」を参照に、体重1kgあたりに必要なエネルギー、たんぱく質、カルシウム、鉄分などを計算して与えることになります。1日3回の食事で必要な栄養素の8~9割を摂取し、残りは果物や乳製品、いも類を間食で補うということになるでしょう。
体重1Kgあたりに必要なエネルギーと栄養素量
ただし、あまり間食を与え過ぎると生活リズムが崩れたり、虫歯の発症率が高くなる傾向にあります。歯磨きを毎日行うなど、きちんとした生活習慣を形成するのも忘れてはなりません。