Lesson8-2 食事の摂取目安と食品群

食事の摂取目安量

人間が摂取すべき栄養素については、前回のLessonで学んだ通りです。しかし「運動した後にたんぱく質をとると筋肉がつきやすい」のように、栄養の摂取の仕方にもちょっとしたコツがありますし、一日の摂取量の目安だって大人と子どもではまるで違います。今回は摂取量の目安について学んでいきましょう。

様々な指標

エネルギーの指標は体格BMI)、栄養素については、

  • 推定平均必要量……人々の5割が必要量を満たすと推定される量
  • 推奨量……ほとんどの人が必要量を満たすと推定される量
  • 目安量……栄養状態を維持するのに必要な量
  • 耐容上限量……過剰摂取を防ぐための最大限度量
  • 目標量……生活習慣病の一次予防達成のために必要となる量

などの指標が用いられます。

エネルギー

エネルギーに関しては、成人では次の式で計算します。

推定エネルギー必要量=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル

ただし、乳幼児や成長期の子どもの場合はこの式にエネルギー蓄積量を加算して

推定エネルギー必要量=基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベル+エネルギー蓄積量

身体活動レベルはPAL (physical activity level) という指標から求められるのですが、たとえば20歳男性なら一日中椅子に座っている人は1.50、軽い運動をする人は1.75、肉体労働者などは2.00など、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」という資料に細かい記載があります。

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基礎代謝

生命維持のために体外から取り込んだ無機物や有機化合物を素材として行う化学反応のことを代謝(新陳代謝)と呼び、有名なものは呼吸や光合成です。基礎代謝は安全な状態で代謝される最小のエネルギー代謝量のことですが、「何もしなくても勝手に消費されるエネルギー量」と考えて構いません。

基礎代謝量は下記の式と参考となる数値を用いて算出します。

基礎代謝量(kcal/日)=基礎代謝基準値(kcal/kg/日)×参照体重

たとえば「日本人の食事摂取基準(2015年度版)」を参考にすると、1~2歳の基礎代謝基準値は61.0、参照体重は11.5kgとなっています。この条件にぴったりの幼児の場合、61.0×11.5=701.5が基礎代謝量となります。つまり、何もしなくとも701kcalは毎日消費するというわけですね。

ただし、乳児期や幼児期、妊婦・授乳婦などは計算式の通りには行きません。

各種栄養素の必要量については、厚生労働省の発表する「日本人の食事摂取基準〔2015年版〕」を参照すると良いでしょう。年齢別、性別ごとに栄養素の摂取量目安が掲載されています。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000041733.html

食品に関する基礎知識

栄養成分の類似したものをグループに分けたものを食品群と呼びます。一般的に良く使われるのは、赤青黄で色分けした三色食品群(身体を作る、身体の調子を整える、エネルギーとなる)と、6つの基礎食品群(1~6群まで、特定の栄養素ごとに分類したもの)です。以下、基礎食品群についてみていきましょう。

1群(たんぱく質)

良質なたんぱく質を含み、主菜となるものです。

魚類は良質なたんぱく質を15~20%ほど含み、DHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸の豊富さが特徴となります。味も淡白で食べやすい白身魚は離乳食の段階からすり身などにして良く使われていますね。

肉類はたんぱく質を20%ほど含み、穀物に不足しやすいリジンビタミンを多く含んでいます。食中毒に注意しつつ、ペースト状にするなど工夫をして幼児に与えるのが良いでしょう。

かたゆで卵、大豆、納豆などは生後7ヶ月ごろからアレルギーに気をつけて食べさせます。

2群(カルシウム)

人間に不足しがちなカルシウムを多く含む食品群です。乳製品小魚海草などがここに含まれます。乳製品は分解酵素を持っているかどうかで大分変わってきてしまうのですが、良質なたんぱく質とビタミンを多く含むため、可能なら積極的に摂りたい食品といえます。

3群(カロテン)

カロテンの含有量が100gにつき600μgを越える野菜を緑黄色野菜と言います。油で調理をすると吸収率が数倍~十数倍程度に高まりますので、にんじんやほうれん草などはソテーにして食べましょう。ただ、その方法だと脂溶性のビタミンAなどもたくさん摂取することになります。身体にいいからといって与え過ぎてもいけません。

4群(ビタミンC)

緑黄色野菜以外の野菜果物きのこなどが該当します。ビタミンは加熱によって失われることもありますが、煮物にしたり炒めたりしてかさを減らせばより多くの野菜を食べられますので、結果的には調理をして食べた方が良い場合もあります。調理法のコツ次第でビタミンの損失は減らせることもありますので、子どもに食べさせる前に調べておくと良いでしょう。

5群(食物繊維)

エネルギーや食物繊維の供給源となる食材です。炭水化物を7~8割ほど含む穀類や、でんぷんとビタミンCを多く含むイモ類、保存性が高く消化吸収の良い砂糖・菓子類がこれに当たります。ただし蜂蜜はボツリヌス菌が検出される可能性があるので、免疫の完成していない新生児に与えるのは控えましょう。(基準としては1歳から与えるべきとされています)

6群(脂肪)

これは油脂類です。直接摂取するのはバターやマーガリン、マヨネーズ、そしてお菓子などに含まれる生クリームくらいでしょうか。基本的には食品を加熱調理する際に用いられますので、あまり摂取方法を考えなくとも構いません。