子どもの食生活について
食事・運動・休養(睡眠)の3つは健康的な生活を保つ上で重要な生活習慣です。
子どもの食事については、体重1kgあたりの必要栄養素が大人より多い、消化機能が完成していない、免疫が未完成なので感染に対する抵抗力が弱いなどの特徴があります。
国民の健康や栄養調査は健康増進法に基づいて毎年実施されており、最近の食生活については以下のような傾向が見られます。
- 穀類の摂取量が減り、肉類が増えている
- 脂肪の過剰摂取
- 野菜や乳製品の摂取量不足
- 食塩の過剰摂取
- 朝食抜き
これに対して、国は2000年に食生活指針を、2006年には妊婦のための食生活指針を作りました。内容については「家族の団欒を大切に」「食塩や脂肪は控えめに」といった基本的なことしか書かれていませんが、私たちはその基本をおろそかにしてしまいがちです。食生活の基礎をつくるためにも、子どもの食事についてはしっかり注意しなければなりません。
栄養に関する基礎知識
エネルギー源の基本となる炭水化物・脂質・たんぱく質を三大栄養素といい、ここに体内機能の維持や調節に必要なビタミン・ミネラルを交えて五大栄養素と呼びます。これらの栄養素に水を加え、バランスよく摂取することが健康の維持には不可欠です。
炭水化物
炭水化物は「糖質」と「食物繊維」に分類できます。糖質は1つの糖の分子からなる単糖類、単糖類が2~10個結合した少糖類、単糖類が数百~数千の単位で結合した多糖類に分類可能で、代表的なものはブドウ糖(単糖類)、ショ糖(少糖類)、でんぷん(多糖類)です。糖質は1gにつき4kcalのエネルギーを供給するもので、日本人が1日に摂取するエネルギーの約60%はこの糖質であると言われています。
一方、食物繊維は消化酵素では消化されないものの総称で、水に溶ける水溶性のものと不溶性のものがあります。寒天ゼリーなどから取れる水溶性の食物繊維には、血糖値を抑える、肥満を防止するなどの働きあがあり、根菜類に多い不溶性食物繊維は排泄促進や有害物質の吸着を担い、便秘の解消に役立ちます。
脂質
「水と油」と言われるように、脂質は一般的に水に溶けにくく、人の体からもなかなか排出されません。脂質自体は1gあたり9kcalのエネルギーを供給する効率の良いエネルギーなのですが、過剰に摂取された場合は中性脂肪として腹腔や筋肉間の結合組織などに貯蔵されます。子どもの食生活を考えるなら、肥満防止のためにも必要量を正しく見極める必要があるでしょう。
脂質は炭素、水素、酸素から構成される栄養素で、構造によって単純脂質、複合脂質、誘導脂質に分類されます。単純脂質はグリセリンと脂肪酸で、グリセリンに3個の脂肪酸が結合したものを中性脂肪と呼び、ふだん私たちが口にするのはほとんどがこの中性脂肪です。複合脂質の代表的なものはグリセリンと脂肪酸のほかにリン酸を含むリン脂質、糖などを含む糖脂質です。そして誘導脂質は、単純脂質や複合脂質が加水分解(水の作用により分子が分解される)されてできるものです。
たんぱく質
約20種類のアミノ酸からなるもので、1gあたり4kcalのエネルギー源となります。しかしたんぱく質の本来の役割は体を作ることであり、エネルギー源となるのは糖質が不足したときです。これを理解しておくと、たとえば空腹で運動したときは、糖質より先にたんぱく質が分解されるために結果として筋肉が落ちてしまうといった事態を防ぐことができます(逆に運動直後の45分間にたんぱく質を取るのは非常に有益です)。
たんぱく質にはアミノ酸だけで構成される単純たんぱく質、そこに糖や脂質が加わった複合たんぱく質、加熱や酸で変性させた誘導たんぱく質の3種類があります。また、アミノ酸の中には人間にとって必要でありながら体内で合成できない9種類の必須アミノ酸と呼ばれるものがあり、食事の際はこれらをバランス良く取らないとなりません。
ミネラル
人体のおよそ5%はミネラル(無機質)からできています。ミネラルは歯や骨、筋肉や神経、体液、赤血球などを作るのに必要なものですが、体内では精製できません。したがって食事から取る必要があります。代表的なものがカルシウムとリンで、日本人に不足しがちなミネラルは鉄とカルシウムです。
カルシウムとリンは歯、骨、神経、筋肉の形成や出血の防止に必要です。カリウムやナトリウムは細胞内の浸透圧や心臓・筋肉の働きを調整します、鉄分は赤血球を、亜鉛は骨を作るのに欠かせません。
ビタミン
少量ながら体を健康に保つのに必要とされるのがビタミンです。脂溶性のものと水溶性のものがありますが、基本的には脂肪と同じで脂溶性のものは蓄えやすく、水溶性のものは身体から出て行きやすいため、脂溶性の過剰摂取には気をつける必要があります。
目や皮膚を健康に保つビタミンA、カルシウムの働きを助けるビタミンD、細胞膜や赤血球を健康に保つビタミンE、血液凝固に必要なビタミンKなどは脂溶性です。代謝にかかわるビタミンB、ナイアシン、コラーゲンの合成や鉄の吸収促進に役立つビタミンCなどが水溶性です。
水分は栄養素ではありませんが、成人でも身体全体のおよそ65%、乳幼児にいたっては70%以上を水分が占めています。体重1kgにつき必要な水分量は以前のLessonで示したとおりですが、水分への依存度の高い乳幼児はとくに脱水症状に陥らないよう気をつける必要があるでしょう。