Lesson7-5 子どもの疾病予防と対応

症状別疾病対応

発熱した、下痢をしている、嘔吐、咳をしている……こんな症状が出たときには、どのように対応すれば良いでしょうか。ここでは各症状別に対策を見ていきましょう。

発熱

定期的に体温測定を行っていれば、急に熱が出たときも迅速に対応できます。平熱よりやや高い程度の微熱であれば緊急性はさほどではありませんが、37.5℃以下でも震えがおさまらなかったり、顔色が悪かったりすれば病院に行くべきでしょう。原因としてはただの風邪(ただし子どもの風邪は侮れません)、インフルエンザ、はしかやおたふくかぜなどが考えられますが、他の病気を併発している可能性もあります。

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対応としては、こまめに体温を測りながら、汗が出るような高熱が出た場合は、汗を拭きつつ首の付け根腋の下を冷やします。注意点としては解熱剤をうかつに使わないことでしょうか。高熱は細菌やウイルスの生存しにくい環境ですので、うかつな解熱剤の投与はかえってウイルス性の感染症を悪化させてしまう可能性があります。

腹痛

腹痛の原因は食中毒や中耳炎、胃潰瘍、ショック状態の腹膜炎など様々です。前回のLessonでも触れましたが、腸重積症の恐れがある場合はすぐに受診させる必要がありますし、痛みが激しい、吐血や下血を伴う、下痢や嘔吐が続くようであればやはり病院へ行って詳細に診てもらう必要があるでしょう。

基本的な対応は安静にさせることですが、腸管にガスが溜まっている場合はうつぶせにすることで治る場合もあります。そうでない場合は、お腹をさする、温める、優しく声をかけて精神的安定を図るなどして苦痛の緩和に努めます。もし吐き気がないようでしたら、白湯を少量ずつ与えるのも良いでしょう。

下痢

単なる食べ過ぎから、食中毒食物アレルギーが原因で下痢を起こすことがあります。まずは安静にして楽な姿勢を取らせ、腹痛のときと同様に吐き気がなければ白湯を少量ずつあげましょう。もし飲み物を受け付けない、顔色が悪いままぐったりしている、微熱とは言えない発熱がある、血便などの症状があるようでしたら、速やかに病院へ連れて行くべきです。

乳幼児は下痢を起こしやすいので、普段からうんちの状態をしっかり見ておく必要があります。軽い下痢でしたら、大人と同様にお腹を冷やさない、下痢の間は乳製品や冷たいものを控えるなど、食事療法を中心として回復に努めます。

便秘

多少の便秘ならそう深刻になる必要はありませんが、2~3日便が出ないようでしたら対策を打つ必要があるでしょう。基本的には食事療法で治すものですが、生後2ヶ月くらいまででしたら、オリーブオイルをつけた綿棒で肛門を刺激して排便を促すこともあります。

水分を多めに与える、お腹のマッサージをする、食事や生活習慣を見直し食物繊維を多く含む離乳食を与えるなど、大人と同じような対応を念頭に置くのが良いでしょう。

嘔吐

新生児の胃は未発達で、成人に比べると嘔吐しやすいつくりになっています。ですので、嘔吐は必ずしも病気が原因というわけではありません。吐瀉物が乳白色、あるいは透明な場合、ミルク胃液が逆流しただけと考えられます。嘔吐しても機嫌がよければ特に問題はないでしょう。

そうでない場合はまず吐瀉物が気管に入らないように顔を横向きにして、優しく声をかけながら落ち着かせましょう。嘔吐が落ち着いたらゆっくり水分補給を行います。それでも、吐き気が続く、発熱や頭痛、血便などの症状が見られる場合は、病院で診察してもらう必要があります。ノロウイルスなどが原因の場合、吐瀉物に触れると大人でも感染してしまうことがあるため、気をつけて消毒を行いましょう。

新生児の喉は未完成なので、ちょっとした刺激で咳が出てしまうことがあります。たとえば室内が少し乾燥しているだけでも咳が出ますので、冬場に室内の湿度を上げれば咳が止まった……なんてこともあります。咳が出た場合は原因をきちんと特定しなければなりません。

乾いた咳が長引く場合は喉が炎症を起こしている可能性があります。ひゅーひゅー、と空気の通り道が狭まっているような音が出る場合は乳児喘息の可能性があり、湿った咳が続くときは喉にが絡まっている可能性があります。

苦しそうな咳が続く場合、数日経っても咳が止まらない場合は病院へ行きましょう。ただの風邪ならともかく、気管支炎インフルエンザが原因で咳が続いてしまう場合は要注意です。

発疹

新生児は肌が乾燥しやすく、角質層も薄いため発疹の症状が出やすいのです。しかしあせもやかぶれではなく感染症が疑われる場合、病院に連れて行く前にまずは子どもを別室に隔離して他の子との接触を防ぎましょう。ベビーシッターが同時に2人以上の子どもを預かる機会はあまりありませんが、きょうだいがいる場合などは特に気をつける必要があります。

掻き毟らないように爪を短く切る、室温を下げて掻痒感を抑える、皮膚を清潔にする、などがすぐに打てる対策となります。もしアレルギー性皮膚炎の可能性があるようでしたら、一度皮膚科に連れて行ってチェックした方がよいでしょう。

脱水

下痢や嘔吐の二次的な症状として現れることが多いのですが、吐き気がないようでしたらまずは涼しい場所に移動させて衣服を緩め、落ち着いたと判断できたら少しずつ白湯を飲ませて水分補給を行います。脱水ではイオンなどの電解質まで不足していることがあるので、ナトリウムカルシウムを補給できる赤ちゃん用のイオン飲料を飲ませてあげるのも良いでしょう。

涙や唾液が出ない、尿が出ない場合は病院へ連れて行きます。

痙攣

中枢神経系の異常興奮によって不随意に筋肉が引きつり、痙攣と呼ばれる症状が発生します。原因は様々ですが、新生児の痙攣発生頻度は大人より高く、子どものおよそ10%は何らかの原因で痙攣を経験しています。痙攣そのものが大事に至る可能性は低いのですが、脳炎やてんかんが原因で痙攣の起こる可能性もありますから、もし痙攣が起きたら必ず病院で診てもらうようにしましょう。

看護のポイントとしては、まず気道を確保すること、呼吸しやすいように衣服を緩めること、事故が起こらないように安全な場所に寝かせることが大事です。