Lesson7-3 子どもの健康状態を把握するには

子どもの病気

子どもの健康のために病気を予防する、対策を行うのは親の義務ですが、もちろんベビーシッターとしても、子どもの健康状態をきちんと把握し、正しい対策を立てられるようにならなければなりません。この章ではまず、何に着目して健康状態を測ればよいか、という話をしましょう。

子どもの健康状態を把握するには?

健康状態をチェックする上で重要なバロメーターとなるのが、体温脈拍呼吸排泄、そして睡眠です。子どもの面倒を見る場合はこれらを定期的にチェックするのが、病気の早期発見の助けとなります。

体温

個人差もありますが、乳幼児の平熱は一般的に成人よりやや高く、36℃~37.5℃の間におさまると言われています。外気温や衣類によって多少変動しますし、食事や運動、睡眠によっても変化します。もし体温を測るなら、これらの体温変動要素のない時間帯を見計らって、定期的に測定するのがコツと言えるでしょう。体温計は耳式、腋式など様々な種類がありますが、測りやすいものを使うのが良いでしょう。

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脈拍

脈拍は心臓の拍動に伴う動脈の圧力の変化を意味する言葉です。私たちが脈を測るときは手首に指を当てますが、新生児の場合手首では分かりにくいため、直接胸に手を当てて脈を測ることになります。

子どもの脈拍数は大人よりはるかに早く、満1ヶ月までの新生児なら毎分120~140回、満1歳までの乳児なら毎分100~120回、幼児でも毎分100回を超えることは珍しくありません。

呼吸

乳児は胸筋が未発達であり、肋骨の構造の関係から胸式呼吸ができないため、自然と腹式呼吸を行います。腹部を圧迫しないように注意しましょう。また、乳児は口呼吸ができないため、鼻が詰まってしまうと呼吸困難に陥ります。呼吸障害が乳幼児の死因第二位に名を連ねているのは、このような理由があるのですね。

呼吸の測定方法としては腹部の上下運動の観察、あるいは手を当ててからの測定です。脈拍同様、幼ければ幼いほど呼吸回数は増える傾向にあり、たまに不規則にもなるので、大人とは比較せず、定期的に記録をつけていきましょう。

排泄

生まれて間もなく胎便から乳便へ移行することは前回のLessonで書いた通りです。ただし、排泄行為そのもののプロセスについてはまだ学んでいませんね。

乳児の排尿・排便は「反射」から始まります。生後2、3ヶ月の乳児は尿意を感じるための精神運動機能がまだ発達していないため、膀胱の内圧を検知できません。したがって、膀胱にある一定量の尿が溜まったら自動的に排出するという仕組みを備えています。排便も同じようなもので、1歳~1歳半頃までは便意を自覚できず、直腸に一定量の便が溜まったら排出される仕組みになっています。排泄のトレーニングができるのは、尿意と便意を自覚できるようになってからになります。

排泄とは異なる機能として、呼吸、体表面からの水分の放散による気化熱を利用して体温調節を行う不感蒸泄と呼ばれるものがあります。この機能が働くと体内の水分が失われて脱水症状を引き起こしかねないので注意しなければなりません。参考までに、体重1kgあたりの乳児における不感蒸泄量は50ml、尿量は90mlであり、1kgにつき150mlの水分を必要とします。体重(kg)×150が乳児の、体重(kg)×100が幼児の1日あたりの水分必要量となります。

睡眠

新生児は3~5時間の睡眠を何度も繰り返し、1日に15~20時間の睡眠を取ります。生後3~5ヶ月ほどで昼夜の区別がつき、概日リズム(サーカディアンリズム)にしたがって夜に寝るようになりますが、この頃から夜泣きも始まるので母親は大変です。

眠りには体を休めるレム睡眠と脳を休めるノンレム睡眠の2通りがあり、大人の場合はレム睡眠の占める割合は2割ほどですが、乳幼児はこれが5割と睡眠の半分近くをレム睡眠に割いていることになります。新生児はまだ脳の発達も充分ではありませんから、脳が成長できるレム睡眠の割合を増やしているのですね。ゆえに、脳が成長するにつれて、レム睡眠の割合は減っていきます。

子どもの健康観察のコツを学び、普段から定期的に記録を取れば、小さな変化にも気付けるようになるでしょう。次のLessonでは、子どもの疾病について学びます。