胎児期から新生児期にかけては様々な機能が発達していきます。感覚機能や運動器官についてはLesson6-2で学びましたので、今回は生理機能と中枢神経系について、医学的・理学的側面を学びましょう。
生理機能
生理機能とは循環器系、消化器系、免疫機能、中枢神経系など、体の生理的な働きに関する機能です。
循環器・消化器
胎児は母体から臍帯(へその緒)を通して栄養をもらっています。胎児の血液の流れを胎児循環と呼び、その循環器系は出生後、すなわち肺呼吸の始まりと同時に消失し肺循環が始まります。この切り替えはとても見事なもので、生後数分で心臓の左心房と右心房をつなぐ卵円孔という穴が閉じ、肺動脈と大動脈をつないでいた動脈管も一日で閉じてしまいます。臍帯の血管もほぼ同時期に閉鎖します。
消化器についてはあまり学ぶことはありませんが、多くの新生児は生まれて24時間以内に胎便を排出します。胎便とは母親のお腹の中で飲んだ羊水や腸液が固まったもので、これを数日かけて全て排出しきった後は、母乳を飲むことで黄色い乳便に変化します。なお、胎便が出なかった場合は新生児黄疸や胎便吸引症候群などの病気の可能性があります。
免疫機能
免疫機能は徐々に変化発達していきます。子どもは母体から胎盤を通して渡されるIgG(免疫グロブリンG)によって、生後半年ほどの間は感染症を防止します。また、母乳で保育される場合、乳児は母乳からIgA(免疫グロブリンA)という免疫物質を受け取り、感染症から身を守っています。これを受動免疫・母子免疫というのですが、つまるところ生まれて間もない頃はまだ母親に身を守ってもらっているのです。
しかし、やがて受動免疫の機能も薄れてきます。そうなると乳児は自分で病気に感染したり、予防接種を経て自ら免疫を獲得していくことになります。そうして自ら手に入れた免疫を能動免疫と呼びます。
中枢神経系
中枢神経系とは大脳、小脳、脳幹、脊髄からなる脳と脊髄の総称であり、胎児期に外肺葉から生まれた神経管から分化していきます。
大脳は前頭葉、側頭葉、頭頂葉、後頭葉に分けられ、人間の多様な機能を担当しています。小脳は平衡感覚、随意運動などを制御しつつ知覚情報の統合と感情の制御を行います。脳幹は間脳・中脳・橋を含む部位で、多様な機能を併せ持っていますが、特に生命維持に関係する機能が詰まっています。脊髄は背骨の中にある神経管のことで、これらをまとめて中枢神経系と呼んでいます。
脳の重量は大人が1300~1400g程度ですが、新生児の段階では350gほどしかありません。脳細胞の数は出生時にすでに大人と変わらない140億に達しており、脳細胞の働きを助けるグリア細胞と神経回路が重量を増していくことで脳重量が増えていくのです。満3歳で大人のおよそ8割、満5~6歳で9割に成長します。